2024.05.15
台湾先住民族のゲノムを用いた研究を行う際の倫理的問題について
SOKENDAI研究派遣プログラム 採択年度: 2023
知久彩楓
画像は台湾の先住民族から構成される「原住民族委員会」に訪問した時のものです。台湾には、現在政府が認識している16の先住民族が暮らしています。それぞれの代表によって構成される委員会が原住民族委員会です。
台湾には漢民族という中国本土から渡来してきた人々に加え、漢民族が来る以前に中国本土以外の島から台湾にやってきて定住している多くの先住民族が暮らしています。現在政府が認識している先住民族は、16集団あります。
日本の統治や漢民族中心の統治を経て、先住民族の立場が弱くなっていましたが、それを改善するために現在では先住民族の基本的権利を保障する法律が立法されています。この法律には、同意なしで一方的に先住民族の研究がされてきた背景を受けて、人類遺伝の研究に関する非常に重要な内容も含まれています。それは、「先住民族のゲノムを用いた研究を行う前」と「研究成果を発表する前」に、先住民族からの許可を得なければ、研究も発表もできないという法律です。今回、私は、研究開始前の段階での原住民族委員会の会議に参加する機会を得ました。研究代表の方が研究目的や計画、予想される結果を発表し、その場で投票により研究遂行の可否が決まりました。発表者は、先住民族の方々にとっても利益がある研究であることや、専門外の方でもわかりやすく説明をすることを意識していました。
日本や他の国では、台湾先住民族ゲノムを研究使用する際ための手続きについてよく知られておらず、必要な手続きを踏まずに研究を進めている研究者が多くいる可能性があり、台湾先住民の権利が守られていないことが考えられます。そのため、今回台湾で学んだ台湾先住民族の研究の際に必要な手続きなどを、論文を通して日本の研究者に伝えていきたいと考えています。
派遣先滞在期間
Date of Departure: 2024/1/8
Date of Return: 2024/2/6
国、都市等
台湾、台北市
機関名、受入先、会議名等
国立陽明交通大学
派遣中に学んだことや得られたもの
今回の派遣では、SNPデータのクオリティコントロールの方法を勉強しただけでなく、台湾の先住民族が住んでいる集落に伺い、実際に先住民族の方とお会いしてお話しすることもできました。私が伺った苗栗県に住む先住民族のある集落では養蜂を行っていて、養蜂場とその蜂蜜の販売方法なども知ることができました。また、台湾の人の歴史や文化を、食事や研究室のメンバー、ルームメイト、各地で出会った方達と話す中で学ぶことができました。
先導科学研究科 生命共生体進化学専攻 知久彩楓