2023.06.20

多波⻑測光観測で探る若い星まわりの惑星形成

SOKENDAI研究派遣プログラム 採択年度: 2022

笠⽊結

天⽂科学

今回得られた4 つの波⻑帯での測光観測の結果と対象天体のイメージ図

右図は観測対象としている連星dipper のイメージ図です。中⼼に⼆つの星があり、それぞれの星の周りにガス円盤が、さらに連星の周りに塵の円盤があります。外側の原始惑星系円盤内の塵が星へ降着しており、これが明るさの変動の原因と推定されていますが、その様⼦や原因物質の詳しい性質などはまだわかっていません。左図は今回のLas Cumbres Observatory での観測から得られた、この天体の可視光4 バンドの観測結果 (g, r, i, zs band、順にそれぞれ図中の⾚, 緑, ⻩, ⻘⾊の点) をそれぞれ表しています。

惑星が形成される現場である「原始惑星系円盤」を持つ若い星を詳しく観測することで、惑星がいつ、どこで形成されるのか︖という謎を解明する⼿がかりが得られます。近年、明るさが⾮周期的に、数⽇の間暗くなる特徴を持つ星が⾒つかっており、「dipper」と呼ばれています。これは若い星の周りにある、惑星の材料となる塵やガスが星の光を隠すことで⽣じていると考えられていますが、その詳しいメカニズムはまだわかっていません。
今回SOKENDAI研究派遣プログラムを利⽤してハワイ⼤学マノア校に5週間滞在し、EricGaidos 教授の協⼒の下、我々が研究対象としてきたdipper 1 天体に対する追加の観測データを解析しました。この観測の⽬的は、複数の波⻑帯で明るさの変動を捉え、その変動の⼤きさの違いから、星の光を隠している塵の性質を明らかにすることです。また、対象天体はこれまでの我々の観測から「連星」であることがわかっています。連星系では単⼀星と異なる重⼒の影響により、円盤構造などに違いがあると考えられており、惑星形成の多様性を探る上で重要な天体です。連星は宇宙の中で珍しくない系ですが、dipper としてはまだあまり⾒つかっておらず、対象天体は貴重なサンプルであると⾔えます。解析パイプラインの調整の結果、観測した4 つの波⻑帯それぞれで1%以下の明るさの変動が測定できる精度が得られました。これは対象天体で⽣じる明るさの変動を捉えるのに⼗分な精度でしたが、その現象の⾮周期性により、今回の3 ヶ⽉間の連続した観測期間中には明らかな変動は捉えられませんでした。今後さらに検証を⾏い、この天体の⾮周期的に暗くなる原因を特定していく予定です。

派遣先滞在期間

Date of Departure: 2023/01/28
Date of Return: 2023/03/05

国、都市等

アメリカ合衆国ハワイ州ホノルル機

機関名、受入先、会議名等

University of Hawaii at Manoa, Institute of Astronomy

‍派遣中に学んだことや得られたもの

派遣期間中、Gaidos 教授との議論だけでなく、研究グループ内のセミナーでの発表をさせていただいたり、別のdipper を研究している学⽣とも議論したりし、この研究を進める上で有意義な情報交換ができました。また、関連分野の他の教員の⽅とも議論ができ、アイデアの幅を広げることができました。ハワイ⼤学は気候だけでなく、研究科内の雰囲気も⼤変過ごしやすく、学⽣、教員が⽴場に関係なく活発に議論する様⼦に刺激を受けました。

物理科学研究科 天⽂科学専攻 笠⽊結

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