2023.05.01
材料科学実験の自動化に向けた粉体粉砕ロボットシステムの開発
SOKENDAI研究派遣プログラム 採択年度: 2022
中島優作
図は開発した粉体粉砕ロボットシステムの写真です。ロボットアームには粉体を粉砕するための乳棒が取り付けられていて、乳鉢内の粉を粉砕します。また、複数取り付けられたセンサの情報を用いて適切な粉砕動作を選択することで、効率的な粉体粉砕を行います。本システムは多関節のロボットを使うことで、人と同じ道具を使いながらも精密な速度や力のコントロールが可能という点も特徴的です。
本研究では材料科学分野の実験における粉体粉砕の作業を自動化するロボットシステムを開発しました。材料科学において、材料の合成や特性評価で粉体の試料を細かく粉砕することが必要ですが、従来は手作業で行われていたため粉砕粉末の品質が作業者に依存し再現実験が難しいことが課題となっていました。自動で粉砕するための粉砕機も市販されていますが、シンプルな動きの繰り返しで粉砕するものが多く、実験で扱う少量多品種の粉を確実に粉砕することは難しいのが現状でした。
そこで、本研究ではこれらの課題を解決するための粉体粉砕ロボットシステムを開発しました。本システムは複数のセンシングを組み合わせてロボットが粉の状態に合わせて粉砕を行います。これによって、材料実験に使う少量の粉を確実な粉砕が可能となりました。また生成した粉末を評価したところ、材料科学の実験にも使用できる十分細かい粉末が生成できました。また、実験の繰り返し再現性も高く、手作業で問題であった粉砕の品質のばらつきを解決しています。今回の成果はシステムの概念実証であり、今後は本ロボットの材料科学実験への応用が期待されます。本システムを用いて粉体粉砕の精密なコントロールと数値化による再現性の高い実験手法を確立し、材料科学の更なる発展を目指します。
派遣先滞在期間
Date of Departure: 2022/4/1
Date of Return: 2023/3/5
国、都市等
日本、大阪
機関名、受入先、会議名等
大阪大学 工学研究科 小野研究室
派遣中に学んだことや得られたもの
派遣プログラム中は、ロボットについて様々な知見を学ぶことができました。アーム型のロボットを動かすためのプラットフォームであるROSの基礎的な知識から、様々なセンサー情報を活用するためのデータ処理技術、さらに研究分野トップレベルの国際会議を目指した論文執筆も経験させていただきました。その中で、技術的にはアームの制御技術、技術以外にも答えが分からない研究を計画する力や分かりやすいロジックで文章を書く能力を身に着けることができたと感じています。これらの経験は今後の研究だけでなく研究以外の場でも積極的に役立てていき、サイエンスである材料科学とテクノロジーであるロボティクスを結び付けた新しい実験の在り方を作っていきたいです。
高エネルギー加速器科学研究科 物質構造科学専攻 中島優作
高専で化学の研究とロボコンに取り組んだバックグラウンドがあり、総研大では両方の知見を組み合わせ、材料科学実験を自動化するためのロボットシステム開発に取り組む。