2022.07.06
考古学的遺物から見つかる古代ウイルスとその進化研究
研究論文助成事業 採択年度: 2022
西村瑠佳
Detection of Ancient Viruses and Long-Term Viral Evolution
掲載誌: Viruses Vol (No), pp, year: 14(6), 1336, 2022 発行年: 2022
DOI: https://doi.org/10.3390/v14061336
古人骨などには古代人由来のDNAだけでなく、古代人の体内に存在していた細菌やウイルス由来のDNAが含まれています。それらのDNA配列をシーケンシングと呼ばれる配列の大規模解析によって取得し、既存のウイルスとの相同性を元にした探索法をはじめとする解析手法を組み合わせることによって古代ウイルスの同定を行います。
古代人の遺骨をはじめとする考古学的遺物には古代DNAや古代RNAが含まれています。これらのDNAやRNAには古代人や古代人に感染していた細菌、ウイルスなどのゲノム(1)情報が含まれています。このゲノム情報を探索することにより、1997年から現在に至るまで遺骨やミイラ化した組織から20種類を超える古代ウイルスが見つかってきました。これらの古代ウイルスの中には100年前にスペイン風邪の流行をもたらしたインフルエンザウイルスや、数百年から1万年ほど前の遺骨から見つかったB型肝炎ウイルスなどが含まれています。これらの古代ウイルスゲノムを解析することにより、過去に起こったパンデミックについてだけでなく、現代のウイルスだけからはわからない複雑かつ長期的なウイルスの進化過程などを明らかにすることができます。本総説では古代ウイルスの探索手法やこれまでに報告のあった古代ウイルスを紹介し、それらのゲノム情報を使ったウイルス進化研究や今後の展望について議論しています。
(1). ゲノム
ある生物の持つ全てのDNA塩基配列を指す。
書誌情報
- タイトル:Detection of Ancient Viruses and Long-Term Viral Evolution
- 著者:Luca Nishimura, Naoko Fujito, Ryota Sugimoto, and Ituro Inoue*
- 掲載誌:Viruses Vol (No), pp, year: 14(6), 1336, 2022
- 掲載年:2022
- URL: https://www.mdpi.com/1999-4915/14/6/1336
- DOI:https://doi.org/10.3390/v14061336
生命科学研究科 遺伝学専攻 西村瑠佳
北海道生まれ。北海道大学理学部生物科学科卒業。現在、総合研究大学院大学生命科学研究科遺伝学専攻に在籍し、国立遺伝学研究所人類遺伝研究室にて古代ウイルス研究を行う。