2022.01.21
有機太陽電池の理想的な性能の予測法~再結合発光の電場依存性測定~
研究論文助成事業 採択年度: 2021
機能分子科学専攻 Ji-Hyun Lee
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Simultaneous measurement of photocurrent and recombination emission in organic solar cell
掲載誌: Japanese Journal of Applied Physics
DOI: org/10.35848/1347-4065/ac4051
図の黒のプロットは有機太陽電池デバイスの電流・電圧特性(J-V)を、赤のプロットは再結合発光の電場依存性(PL-V)を表します。J-Vは無輻射再結合を含むデバイスのすべての再結合情報を含んでおり、効率低下を引き起こす再結合を特定することは困難です。一方、PL-Vは発光再結合の情報のみを含んでいます。結果として、両方の曲線因子の差の原因は無輻射再結合に起因しており(灰色の領域)、PL-Vから、無輻射再結合を含まない理想的な有機太陽電池の性能を予測することができます。
有機太陽電池は低コスト、柔軟性、軽量性などの利点から、次世代の再生可能エネルギーとして注目を集めています。近年その発電効率は急上昇し、今後の実用化が期待されています。
私の研究テーマは有機太陽電池内で起きる電荷再結合です。電荷再結合は、光を吸収し生成した電荷が外部に取り出されずにエネルギーを損失するプロセスで、有機太陽電池の効率を低下させます。再結合には発光再結合と無輻射再結合があり、無輻射再結合を抑えることで有機太陽電池の効率が向上することが期待されます。
本研究では光電流と再結合発光を同時に測定することで、無輻射再結合が排除された際の有機太陽電池の理想的な光電変換性能を明らかにしました。再結合発光の電場依存性(PL- V )を測定し、光電流の電場依存性( J-V )との比較を行いました。その結果、無輻射再結合を排除した場合、有機太陽電池の性能を決定する重要パラメーターである曲線因子*が49.81%から71.73%まで向上するという結果が得られました。今後、この無輻射再結合を抑止できる手法が開発できれば、有機太陽電池の効率の向上が期待されます。
*曲線因子:有機太陽電池の最大電力に関する因子、電流・電圧特性が四角になるほどデバイス性能が高い。
書誌情報
- タイトル: Simultaneous measurement of photocurrent and recombination emission in organic solar cell
- 著者: Ji-Hyun Lee, Masahiro Hiramoto, Seiichiro Izawa
- 掲載誌: Japanese Journal of Applied Physics
- 掲載年:2022
- DOI: org/10.35848/1347-4065/ac4051
物理科学研究科 機能分子科学専攻 修了 Ji-Hyun Lee
私は分子科学研究所平本研究室所属のLee Jihyunです。私の研究テーマは有機太陽電池における電荷再結合です。有機太陽電気の効率向上のため理想最高性能にアプローチする方法を提案しました。2021年、総合研究大学院大学で博士後期課程を修了し、第7回SOKENDAI賞を受賞しました。今後も人々の豊かなエネルギー環境のため一生懸命頑張ります。