2021.07.16
野辺山45m電波望遠鏡で探るオリオンA分子雲の星の"たまご"
研究論文助成事業 採択年度: 2021
天文科学専攻 竹村英晃
天文科学コース
The C18O core mass function toward Orion A: Single-dish observations
掲載誌: PASJ,tmp,30T 発行年: 2021
DOI: https://doi.org/10.1093/pasj/psab014
(右) 横軸は分子雲コアの位置における水素分子の柱密度、縦軸は分子雲コアの分子雲の質量の比をそれぞれ表しています。縦軸の値が小さいほど、分子雲の周囲に物質が多く存在していることを意味します。 (左)視線方向において分子雲コアの周囲に物質が少ない場合(上)と多い場合(下)の模式図です。各図の左側から分子雲を観測したときに、上の場合は分子雲コアの前後に物質はありませんが、下の場合はその前後に物質が多く存在しています。
星は分子雲の中の物質密度が高い領域である、「分子雲コア」で形成されると考えられています。つまり、この分子雲コアが星の"たまご"です。分子雲とは銀河を雲のように漂う、主に水素分子ガスで構成されている天体です。星の形成過程を解明するためには、分子雲コアの質量や大きさなどの性質を詳しく調べる必要があります。しかし、分子雲の典型的な温度はマイナス250度程度と非常に低く、人間の目に見える光では観測することができません。
本研究では、活発に星形成活動をしていることで知られる、オリオン大星雲に付随する分子雲を観測対象としました。この分子雲は、地球から約1200光年の距離にあります。我々は野辺山45m電波望遠鏡で一酸化炭素の同位体置換体が放射する電波を観測して作成した分子雲の広域マップを用いて分子雲コアの探査を行いました。我々は分子雲コアを、構造解析アルゴリズムを用いて周囲の物質から切り分けることにより、探し出しました。
分子雲コアの質量とその周囲の物質の質量を比較したところ、分子雲コアの周りにも多く物質が存在していることを明らかにしました。一方で、質量が小さい分子雲コアは見付けきれていない可能性があり、さらに空間分解能(視力)が良い観測を行うことが必要であることがわかりました。私たちはさらに空間分解能が良いデータを用いて、分子雲コアの性質を調べていく予定です。
書誌情報
- タイトル: The C18O core mass function toward Orion A: Single-dish observations
- 著者: Takemura, H., Nakamura, F., Ishii, S., et al.
- 掲載誌: PASJ,tmp,30T
- 掲載年月: April 2021
- DOI: https://doi.org/10.1093/pasj/psab014