2022.11.09
第63次南極地域観測隊(越冬隊)の隊員からメッセージが届きました⑤
こんにちは。第63次南極地域観測隊に参加中の事務局職員の馬場です。
⽇本では次第に秋が深まっている頃だと思いますが、北半球と季節が逆の南極では⽇ごとに太陽が出ている時間が⻑くなり、冬が終わって夏が次第に近づいてくるのを実感します。
9⽉から10⽉初旬にかけて晴れて放射冷却が強まり最低気温がマイナス30度を下回る⽇もありましたが、そのような天気の良いときは、ハロや幻⽇といった光学現象を⾒ることができた⽇もありました。
その一方、短い周期で低気圧が近づいてブリザードとなることが多く、たびたび外出禁止令や外出注意令が発令されました。日本に台風が近づくと気温と湿度が上昇するように、昭和基地に低気圧が近づくと気温が高くなります。 10 月下旬にブリザードが来た際は最高気温がマイナス2~3度となる日もあり、寒さに慣れた越冬隊員にとっては暑く感じることもありました。
10月 21 日には、オーロラの光学観測を行うために行われていた灯火管制が終了し、冬の間我々の目を楽しませてくれたオーロラが見納めとなりました。 11 月 22 日からは太陽の沈まない白夜が始まります。
夏が近づくにつれ、昭和基地では 64 次隊の受け入れ準備が本格化してきました。南極大陸の内陸部にあるームふじ基地に最古級のアイスコアを掘削するための拠点を建設するため、 64 次隊の先遣隊が間もなく南アフリカのケープタンから空路で昭和基地入りし、現地での作業期間 50 日を含む往復 100 日に及ぶ内陸旅行に出発する予定で、 63 次越冬隊からは 6 名が参加します。その内陸旅行の準備として、雪上車の整備や、燃料や物資を橇に積み込む作業のほか、昭和基地沖の海氷上の滑走路整備などが 9 月から 10 月にかけて行われました。
また、ブリザードが来るたびに基地内の除雪や、生活に必要な水を賄っている 130kL 水槽の水面に貼った氷を割る作業を行っています。
段々と慌ただしさを増してきた昭和基地ですが、野外行動訓練のため、 9 月に西オングル島にある 1 次隊の上陸地点を徒歩で再訪しました。 1 次隊の上陸式典の写真を参考に、式典を執り行った場所にある岩を雪の中から掘り出そうと試みましたが、結局発見には至りませんでした。このとき、凍結した西オングル島の大池の上を歩いて通過しましたが、湖底から吹き上がった気泡が透明な氷の中に閉じ込められた様子を見ることができました。そのほかに、 10 月には、 5 月に行われたそうめん流しに参加できなかった者を対象に昭和基地近くの氷山でそうめん流しを行いました。
また、越冬隊ではいくつかの生活係が置かれ、外部から閉ざされた昭和基地での越冬生活に潤いを与えるために活動しています。例えば、ブリザードで屋外の作業ができないときは、喫茶係のメンバーがコーヒー豆を焙煎してコーヒーを入れてくれたり、パン・麺係のメンバーでパン作りに挑戦したりしました。また、ライギョダマシという魚の生態調査のため、漁協係のメンバーが海氷上に仕掛けを設置し、ライギョダマシがかかっていないか時々確認に出かけています。
11月 10 日には、2週間の隔離を経て横須賀で「しらせ」に乗船して日本を出てから 1 年が経ちます。 12 月には「しらせ」に乗った 64 次隊の本隊が昭和基地に到着します。来年 2 月 1 日に昭和基地の管理・運営を 64 次越冬隊に無事に引き継げるよう、残りの日々を過ごしていきたいと思います。
掲載協力:国立極地研究所