2022.01.25
第63次南極地域観測隊(越冬隊)の隊員からメッセージが届きました②
総研大ウェブサイトをご覧の皆さま、明けましておめでとうございます。第63次南極地域観測隊に参加している事務局職員の馬場です。昨年(2021年)12月16日に昭和基地に到着してから約1か月が過ぎました。今回は昭和基地到着前後の様子についてご紹介します。
63次隊を乗せた「しらせ」は、低気圧を避けながら南下していましたが、12月上旬、暴風圏に突入しました。暴風圏では船体が大きく動揺し、廊下を真っすぐ歩くことも困難になるほどでした。
しかし、暴風圏を抜けると一転して海面は穏やかになり、時折ペンギンやアザラシの姿も見られるようになりました。
周囲の流氷が増えてくると、見える世界は段々と白くなり、南極に近づいていることを実感します。
12月10日朝に「しらせ」はリュツォ・ホルム湾の定着氷縁に到達しました。連続砕氷で進むことができた流氷域とは異なり、100mほど後ろに下がり、勢いをつけて氷の上に乗り上げ、船の重みで氷を割る「ラミング」と呼ばれる方法で前進します。氷が厚いところでは、なかなか先に進むことができず、ペンギンに追い抜かされることもありました。ちなみに、往路のラミング回数は610回でした。
12月14日にはヘリコプターの試験飛行と氷状偵察フライトが行われ、いよいよ昭和基地に入る日が近づいてきました。
そして、12月16日、牛尾隊長を乗せたヘリコプター第1便に私も搭乗し、62次越冬隊の待つ昭和基地のヘリポートに降り立ちました。
11月10日に横須賀を出港して以来、陸地を踏むのは約1か月ぶりでしたが、感慨に浸る間もなく、62次隊の食糧や、夏期間中の初期に必要な観測・設営機材をヘリコプターで輸送する優先物資空輸が始まりました。越冬隊の庶務隊員は、翌年には昭和基地へ持ち込まれる物資の荷受けを担当することになるため、私は昭和基地到着後そのままヘリポートに残り、引継ぎを兼ねて荷受け作業に従事しました。(優先物資空輸や氷上輸送などの様子は、 極地研の観測隊ブログ に記事が掲載されていますので、そちらもぜひご覧ください。)
優先物資空輸が終了した12月19日、「しらせ」は砕氷航行を再開し、昭和基地から約350mの距離に接岸しました。接岸といっても昭和基地に岸壁はないため、基地のタンクからホースを展張して燃料をホースで輸送できる約1km以内の距離に到達し、停泊することを接岸と呼んでいます。接岸後すぐにホースを接続できるように待機しながら「しらせ」の接岸を見守りました。
ヘリコプターによる輸送は、昭和基地への物資輸送のほかにも、昭和基地から離れた野外での観測を支援するためのフライトが組まれます。私も氷上輸送の合間を縫って、12月24日には着陸地点の調査を行うフライトに搭乗させてもらいました。
また、手空きの日には古くなった建物の解体工事や、新しく作られる建物の基礎を作る工事に参加しました。夏期間中の昭和基地は、しばしば工事現場のようだと言われますが、まさに工事現場そのものです。到着まで段々と白い世界に馴染んできたのに、夏期間の昭和基地は雪解けが進んで茶色い世界が広がっており、なんだか不思議な感覚です。
昭和基地の夏期間は怒涛のように過ぎていきます。
次回は62次隊との越冬交代後にレポートする予定です。お楽しみに!