2017.04.25
【受賞】第3回総研大科学者賞の受賞者について
第3回総研大科学者賞について、総研大科学者賞選考委員による書類審査および平成29年1月31日に行われた選考委員会により、研究内容を中心に国際性、学際性、科学と社会の関係についての見識について総合的に判断した結果、下記の方を受賞者として決定いたしました。
また、平成29年4月11日に授賞式および受賞者講演が行われました。
受賞者および受賞理由
数物科学研究科構造分子科学専攻 平成11年3月修了 荒木 光典 氏
(現:東京理科大学 研究推進機構 総合研究院 プロジェクト研究員(PI))
荒木光典氏の研究は、超精密マイクロ波分光法を用いた星間分子の同定およびその生成反応機構の解明であり、宇宙空間において多くの新奇な分子種、特にイオン種また非直線炭素分子種の同定などに大きな貢献をおこなってきました。未知の分子種を見つけるために実験室でイオン分子種、ラジカル分子種を発生させ、それらのスペクトルの特徴を抽出し、それを基にマイクロ波天文観測によって得られる複雑なスペクトルの中から新規分子種を同定という非常に地道な研究を粘り強くつづけています。その目的は、生命誕生に至る「宇宙における分子進化の過程」を明らかにしようとするものであり、分子科学、天文学、更に生命科学など広い学問分野と関係しています。特に最近発展の著しいアストロバイオロジー研究の大切な基礎ともなっています。
荒木光典氏は、相当数の学術論文を発表すると同時に、「天文月報」、「化学」などの一般読者向けの雑誌にも多くの総説を寄稿しており、社会への発信を積極的に進めています。
以上のように、荒木光典氏は総研大の博士後期課程においてマイクロ波分光学を学び、強固な学問的基礎を築き、それを大きく発展させ分子科学と天文学との境界領域で重要な貢献をしてきました。その研究は地味ではあるが、学際性あふれるものであり、総研大科学者賞に相応しいものと考え、荒木光典氏を受賞者として決定いたしました。
受賞者講演
受賞者講演では、「一念を貫け レアチャンスはレアじゃない」をテーマに荒木先生の研究内容や研究者としての道程を中心にお話しいただきました。講演終了後は新入生からの質疑応答があり、非常に盛況な講演会となりました。