学長メッセージ

総合研究大学院大学SOKENDAIは,「大学共同利用機関」と呼ばれる国立研究機関を教育の場として,次世代を担う博士研究者を育成するために設立された大学です。1988年に国内初の国立の大学院大学として開設されて以来,基礎学術の様々な分野に約2,500名の博士を送り出してきました。

全国に19ある大学共同利用機関は,大規模な実験施設や先端的な研究設備,貴重な研究資料を備え,第一線の研究者集団を擁しています。国内外の多くの研究者がその研究設備や資料を共同で利用し,機関の研究者と緊密な共同研究を行っており,大学共同利用機関は人文学から高エネルギー物理学に至る広範な学術分野を牽引する中核拠点となっています。SOKENDAIの最大の特色は,そのような世界トップクラスの基礎研究が行われている機関を大学院教育の場としていることです。

大学を取巻く社会の姿は,この20年の間に大きく変化しました。ICTの劇的な進歩に伴って,地域・年齢・性別・言語などの境界さらには時空を超えて膨大な情報が行き交い,社会が向かっていく方向として仮想空間と現実空間が融合した新たな姿が提示されています。一方で現実に眼を向けると,人類社会は未曽有の課題に直面しているように見えます。誰しもが,10年後,20年後の人類社会の姿を想像することに困難さを感じているのではないでしょうか。

そのような状況の中で,大学が果たすべき役割とは何か。大学が培ってきた基礎学術・基礎研究の大切さは万人の認めるところですが,個々の研究者の純粋な好奇心に基づく知的活動の成果が人類全体の知として蓄積され,社会をよりよい方向に導いていくというほど,世の中のシナリオは単純ではなさそうです。そんな先の見えにくい時代だからこそ,社会はその未来を託すことのできる人材を必要としています。大学は学問の府としてその要請に応えねばなりません。

SOKENDAIは,2023年4月にこれまでの教育組織・教育課程を大きく再編し,先端学術院20コース体制となりました。新たな教育課程は,素粒子・物質・生命・宇宙・情報・歴史・文化の広範な学術領域をカバーする20のコースから成り,学生は自らが専門とする学問分野の基本的な知識と教養を修得しながら,その専門に囚われることなく,主体的に学修・研究活動を行えるようにデザインされています。ディプロマ・ポリシーに掲げた「専門力」「独創性」「学際性」「国際力」「倫理性」の5つの力量は,いかなる課題に直面しても,自立した研究者として果敢に立ち向かう博士人材を念頭に置いたものです。

SOKENDAIは,長期的な視点に立って真に人類社会に資する学術のあり方を見据え,社会の知的基盤を支える学術の継承・発展や高度な研究開発の担い手となり,新たな知的価値を生み出すことができる博士人材の育成を目指して,広く社会に貢献していく所存です。

 

2024年4月1日
総合研究大学院大学長

永田 敬

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